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吉田隆記者、ジャーナリスト

1984年に写真週刊誌「FRIDAY」の創刊準備メンバーとして専属記者契約を結ぶ。87年の大韓航空機爆破事件では、犯人の金賢姫たちが隠れていたブダペストのアジトを特定、世界的に話題となる。初代「張り込み班チーフ」として、みのもんたや落合博満の不倫現場、市川染五郎(現・松本幸四郎)や石原慎太郎の隠し子、小渕恵三首相のドコモ株疑惑などジャンルを問わずスクープ記者として活躍。

<67>「気を付けてね」笑顔で見送るドン・ファンと永遠の別れ

公開日: 更新日:

 そんなことをボーッと思っていたが、いやいや、人間だって社会という檻の中で生活しているんじゃないか、と気が付いた。上から目線で同情するのは滑稽だろう。

 裁判所の執行官は予定の時刻になっても姿を見せなかった。社長が電話連絡を取ると、なんと執行官が日付を間違っていたことが分かり、この日は延期されることになった。

「ったく、しょうがないですね」

 私は笑うしかなかった。ドン・ファンも怒ることもなく、老婆との会話を楽しんでいるように見える。

「ほんじゃあ先に帰りますね」

 私はドン・ファンに軽く挨拶をしてマコやんが運転する車に乗り込んだ。JRの紀伊田辺駅まで送ってもらい、そこから東京に戻る予定だった。

「気を付けてね」

 木の枝を杖代わりにしていた社長が笑顔で見送ってくれた。これが永遠の別れになるとは、全く想像もしていなかったのである。 =つづく

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