五木ひろしの光と影<24>「平尾センセ、『姫』の山口洋子さんってどんな人だった?」
長丁場となる特番収録の合間に平尾は、共演者のマツコ・デラックスやミッツ・マングローブらとたわいない会話に興じていた。
あるとき「平尾センセ、『姫』の山口洋子さんってどんな人だったんです?」と共演者の誰かが質問した。たまさかその場に居合わせた筆者も関心を持って耳を傾けた。すると平尾は「洋子ちゃんっていうのは強い人だったよぉ」と、いくつかのエピソードを披歴した。その中に「ズズ(安井かずみ)との仕事はほどほどにして」という1973年の出来事もあった。
「凄いわね。そりゃあ、あの時代の銀座で頂点に立つって、並大抵の女じゃまず無理よ。うん」と深くうなずくマツコ・デラックスの姿を筆者は記憶している。
そんな“強い女”山口洋子でさえ、73年は強さだけでは乗り切れそうにないもどかしさを感じていた。すべての理由は「日本レコード大賞」にあった。五木ひろしに大賞を取らせて、自ら「レコ大作詞家」の栄誉にあずかりたかった。とはいえ大賞は容易に獲得できるものでもない。セールス、楽曲の優劣、歌唱力、レコード会社及び所属事務所のマネジメント能力とクリアすべきハードルはいくつもあった。