NHKBS「河瀬直美が見つめた東京五輪」は疑問・疑惑だらけ
もし素材を使うことが許されなかったのなら、これほど核心に触れた部分を、撮れもしないでテロップで処理するのはドキュメントとしては感心できることではない。
さらに不思議なのは、もし謝罪文の通り、そういった事実がないのなら、試写を見た島田氏が「これは事実ではない」と指摘すべきなのになぜしなかったのかという点だ。そのための試写ではないか。
その謝罪文も疑問が多い。まず何よりも両監督ともに責任はないと強調したことだ。あくまで局側の失態で映画には関係ないとしたいのだろうが、事前に見てそのままにしたなら両監督の責任でもあるだろうし、なによりこれは映画の素材であるから、この問題がなければ映画内で使われる可能性もあったのではないのか。そしてなにより問題なのは、そのことで名誉を傷つけられた反対側の人々に対する謝罪は一切行われていないということだ。
ディレクターにはかなり確信犯的なものがあったのではないか。この番組の制作が大阪NHKであることも意味があるのではないか。関西出身の河瀬監督との親和性だけだろうか。2025年に予定されている万博のプロデューサーにも河瀬氏は名を連ねている。
映画は「河瀬監督が見つめた東京五輪」ではなく、「河瀬監督とその仲間だけが見つめた東京五輪」になるのではないだろうか。