露呈したNHKの構造的な問題 旧統一教会の実態は「当局取材」からは見えてこない
NHKの中で旧統一教会の取材を求める“お達し”が出たことが日刊ゲンダイで報じられていた。NHKの中にいた私には、その状況が容易に推測できる。多くの人は、NHKは旧統一教会と政治の深い闇を知っているにもかかわらず政権への忖度で報道を抑制していると考える。そういう視点でのNHK批判がネットにあふれている。
しかし、恐らくそれは実態ではない。では、NHKで今何が起きているのか? それは冒頭の“お達し”と私のNHKでの経験から推測するに、NHKはこの「特定の宗教法人」について実際には大した取材はできていないのだろう。
これはNHKでニュース番組を担う記者の構造的な問題だ。説明しよう。NHKには東京に数百人規模で記者を配置している。全都道府県にも多くの記者が配属されている。日本最大のニュースメディアだ。それだけの記者がいれば旧統一教会の情報はすぐに入手できると思うだろう。実はそうではない。
NHKの記者は政治家や役所に張り付いており、この業界で「当局」と呼ばれる公的な存在への取材に日々集中している。朝は「朝駆け」で取材先の家に行き、夜は「夜回り」で家の前で待つ。日中は担当する役所の動きを取材する。それがNHKの記者の姿だ。