昭和コメディー「世界は笑う」に出演! 演劇人生の後半になっていい勉強になった
渋谷シアターコクーンで上演された芝居、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出「世界は笑う」が昨日、旅公演先の京都劇場で大千秋楽を迎えた。演劇にあまりお詳しくない読者に説明すると、ケラリーノ・サンドロヴィッチと言っても外国人ではない。有頂天というバンドで歌手ケラとしても活躍している、演劇界の今や重鎮。毎年何かしらの演劇賞を取っている、公演すれば超満員の人気作演出家だ。その公演「世界は笑う」に私も出演させていただいた。
舞台は昭和32年の新宿。エノケンやロッパには往年の勢いはなくなり、脱線トリオの「お昼の演芸」や「お笑い三人組」が始まったばかりの、まだテレビも普及していない時代。架空の喜劇の劇団「三角座」の喜劇人の悲喜こもごもを描いた芝居だ。
そう書けばコテコテの人情喜劇を想像されるかも知れないが、実は実際笑いどころは多いものの、喜劇人の苦悩やどうしようもなさ、狂気に満ちた日常を淡々と描いた苦い群像劇で、チェーホフのような趣のある芝居だ。
ケラ自身新しい笑いをずっと追求してきて、今やナンセンスな笑いを書かせたら右に出るものはいない笑いの旗手だが、そのケラが、父親がジャズマンだったことから、森川信ら名だたる昭和の喜劇人が子供の頃家にやってきてマージャンしていたという環境で育ち、いつかは書かなければいけないとずっと温めてきた題材だけに、ケラ自身の笑いに対する愛情や覚悟や矜持がこの芝居にはあふれている。