宮本笑里がデビュー15周年 「父に厳しくされていた悔しさをバネに、演奏してきました」

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録音は「ホールに助けられたところも大きかった」

 彼女の演奏は物語や風景を感じる。色彩がある。

「どの曲も歌詞はなくても、物語を描いてはいます。たとえばファリャの『スペイン舞曲第1番』は、恋をした女性が相手の男性の結婚式まで押し掛け、拒否されたショックで死んでしまう物語です。ドロドロした愛憎劇をいかに重く感じさせず、心地よく聴かせるか。集中して演奏しています」

 この物語には、なかなか自分を投影できそうにない気がするが──。

「主人公に自分を重ねるのではなく、語り部のように、物語や景色をバイオリンで描いていきます。今作は、スタジオではなく、東京の代々木公園にあるHakuju Hallでレコーディングしましたが、ホールに助けられたところも大きかった。重々しくなりそうな曲でも、ホールの持つ響きやぬくもりのおかげで軽やかな演奏ができました」

 ホールも楽器のような存在なのだろうか。

「ホールそのものの素材やつくりはもちろん、そこで働く支配人さんをはじめとするスタッフの温かさによって、演奏者の緊張がほぐれ、いい状態の筋肉で演奏できるんですよ。すると、私が演奏しているのに、音楽が私が今までに見たことのない風景を体験させてくれることもあります」

 ホールに包まれ、共演する音楽家やスタッフに励まされて、「classique deux」は完成した。

「コロナ禍が続き、苦しい状況の人もたくさんいらっしゃると思います。私のアルバムが多くの人の心に寄り添えたらいいな、と願っています。私自身、楽しいときも、苦しいときも、音楽に寄り添ってもらい、続けてくることができました」

(取材・文=神舘和典)

▽宮本笑里(みやもと・えみり) バイオリニスト。東京都出身。14歳でドイツ学生音楽コンクールデュッセルドルフ第1位入賞。その後は、小澤征爾音楽塾、NHK交響楽団などに参加し、2007年「smile」でアルバムデビュー。テレビ番組、CMにも出演するなど幅広く活躍中。

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