次世代へと広がる宮崎駿とジブリの世界 作り手側の「感性のリレー」が始まった
「宮崎駿監督ならどうする?」を念頭に製作
シアマ監督は作品の方向性を見失ったとき、「宮崎駿監督ならどうする?」と自分に問いかけたというが、子供たちが自分の感覚で何を選ぶかを考えるとき、宮崎監督の感性が彼女の助けになったらしい。
さらに14日には平川雄一朗監督の実写版「耳をすませば」が公開される。95年に宮崎駿が脚本と絵コンテを担当、近藤喜文が監督したスタジオジブリのアニメーションが公開されているが、今回はその主人公である「雫と聖司の10年後」を描いている。清野菜名(27)と松坂桃李(33)が本の編集者とチェロ奏者になった2人を演じていて、それぞれ人生の壁にぶつかった彼らの恋の行方が映し出されていく。劇中には彼らの少年少女時代が回想シーンとして登場し、アニメーション版と比べてしまう人も多いはず。
シアマ監督が43歳、平川監督が50歳であることを思うと、子供の頃に宮崎駿監督とスタジオジブリの作品を見てきた世代がクリエーターになって、その世界を自分の作家性によって咀嚼した映画を作り上げている感じがある。いわゆるリメーク、リブートとは違った、作り手の世代を超えた感性のリレーが始まったようだ。
また近年、宮崎駿とスタジオジブリの世界は、2019年に「風の谷のナウシカ」が新作歌舞伎になったのを皮切りに、今年は「千と千尋の神隠し」、今月はイギリスのロイヤル・シェークスピア・カンパニーによって「となりのトトロ」が舞台化されるなど、映像以外の表現方法でも広がりを見せてきた。さらに11月には「耳をすませば」に出てくる「地球屋」や、「となりのトトロ」の「サツキとメイの家」も再現されたジブリパークが愛知県で開園。映画に描かれた舞台を、自分の肌で追体験できる施設としてこちらも注目度は大きい。
ワールドワイドに次の世代へ受け継がれつつある宮崎駿とスタジオジブリの世界が、どのように広がっていくのか。今後の展開が楽しみなところだ。
(映画ライター・金澤誠)