生きるために政治は必要だが、生き心地を確かめるには文学が役に立つ
金融緩和策をとってきた日銀の黒田総裁の任期が4月8日に満了する。翌9日と23日は統一地方選挙。首相は国民負担増を想起させるワードの使用を控えることに余念がない。財務省と政権が防衛費の財源確保のために全面増税の機会を窺っているのは明らかなんだけどね。NGワードの最たるものは「増税」。だが国民の目をそらそうと少子化対策を話しても、同性婚を語っても、舌禍は続くよどこまでも。何かを隠す目的ありきで時間を埋めるためだけに発した言葉には、どう隠しても本音が露見するからだ。げに恐ろしきは言葉かな。
言葉には、話し言葉と書き言葉がある。前者は概して正確な伝達よりも円滑なコミュニケーションを主目的とする。それゆえ柔らかさを重んじるし、聞き手の警戒心を解くために平易でくだけた表現を優先する場合も多い。もちろんスピードや声のトーンといった要素も無視できない。話し言葉と書き言葉、ふたつの架け橋となるのが朗読。たとえ黙読を前提として書かれた文章であっても、語りのプロが朗読すれば、描かれた情景は見事に立ちあがってくる。
クルマ通勤が主流の米国を筆頭に欧州や中国ではオーディオブック市場が活況を呈している。それほどまでには盛り上がっていない日本でも、聴き放題サービスの広告を目にする機会が増えてきた。日本能率協会総合研究所の予測によれば、2020年には100億円に満たなかった市場規模が24年には260億円に達する見込み。ぼく自身この2年ほど移動時や就寝前によく利用しているので、朗読の効果は日々体感している。