ジャニーズとメディアの“共犯関係”を暴く! 残存する報道資料を徹底検証
鼻薬を嗅がされたメディア
その一方で系列会社が発行する「日刊ゲンダイ」には83年から「ドキュメント・ノベル」と称した豊田行二の「ガラスの野望」が連載された。この小説はフォーリーブスの北公次とジャニー喜多川の肉体関係を描いたモデル小説で、いわばジャニーズ事務所への報復だろう。同作は暴露本「光GENJIへ」に5年先んじている。当時は芸能事務所と出版社がまだ丁々発止の関係にあったのだ。
しかし90年代、光GENJIやSMAPなどトップアイドルを次々と送り出したジャニーズ事務所は圧倒的な権力を手にして出版社やテレビ局を懐柔した。
その背後にはメディア企業幹部のための接待同様の取材ツアーや、億単位の利益をもたらす利権事業がある。こうした策略も、週刊誌報道の中に、わずかに文章という形で残っているのだ。
99年、「週刊文春」がジャニー喜多川の性加害を告発する報道キャンペーンを張り、やがてジャニーズ事務所に告訴された。だがその時代、記事を後追いしたり、裁判を詳報するメディアは少なかった。発表されたわずかな記事から裁判の様子をできる限り再現してみると、鼻薬を嗅がされたメディアがいかに及び腰だったかが分かる。
最近の吉本興業絡みの松本人志性行為強要報道にも表れているように、多くのメディアは大手芸能事務所を擁護する。その宿痾の根源は、人気タレントに依存して成果を優先し、モラルなど顧みない企業風土だ。そこにジャニーズ事務所の成長と共に歩んだ日本の戦後が凝縮され、性加害事件によって、今、その解体的出直しが迫られているのだ。 =文中敬称略
(文=藤木TDC)