追悼・中尾彬さん 流儀を貫いた粋人81年の生涯…お酒が「おしどり夫婦」誕生のきっかけに
■大病した後も夫婦で晩酌を
飲んでも、泥酔したり乱れたりはしないのが中尾さん。大病した後も「人生の楽しみを半分知らないようなもの」と、夫婦で晩酌を楽しんだ。池波がその様子を語ってくれた。
「毎日お品書きを書くんです。それでお刺し身だったら日本酒、イタリアンだったらワインというふうにおかずに合わせて何でも。2、3時間かけて日本酒だったら2人で5合、ワインなら1~2本。休肝日はありません。飲まないと次の日に『ゆうべ飲んでないから、今日はいっぱい飲もう』ってかえってたくさん飲んで体に悪い」
とんかつならここ、蕎麦ならここと、行きつけを持っていた。東大の正門前にある「喫茶ルオー」もそのひとつ。美大中退の油絵描きとあってか、画廊喫茶として1952(昭和27)年からある老舗に30年以上通っていた。フードメニューは1種類のみ。名物「セイロン風カレーライス(セミコーヒー付き)」を味わっていたようだ。
「寿司店では、つまみを味わうときは日本酒などを傾けるのですが、握りになると、あがりにしていた。酔っぱらって食べたら職人に失礼だというのです。寿司は職人の手仕事が詰まっているからと、手づかみで召し上がっていました」