追悼・桂ざこばさん 「同じ演目」でも「同じ噺」はない“ざこば落語”の真骨頂
上方落語界の重鎮、桂ざこばさんが亡くなられました(享年76)。
感極まれば人目もはばからず涙を流す、喜怒哀楽をストレートに表現される個性は本当に貴重な存在でした。怒ってらっしゃる時は取り付く島もなく、怒りが静まるのを待つだけ。相手が政治家であろうが先輩であろうが、ご自身の尺度で「悪いヤツは悪い! ええヤツはええ!」という立ち位置を変えない。これはなかなかできることではありません。その根底にあったのは「俺は落語家や。テレビやラジオがなくなったて舞台があるわい!」という“落語家のプライド”と“高座へかける熱い思い”ではなかったでしょうか。
私も15年以上番組をご一緒させていただきましたが「いつ降ろされたってかめへんねん。しがみつく気はないさかい」といつも本音で話をしておられました。その後すぐに「けど、ホンマになくなったら大変やけどな(笑)」と笑いに変えてらっしゃいましたが、本気だったと思います。
感激屋で涙もろく、学校や役所の怠慢で子供さんが命を落とされるようなニュースになると、「やることやれよ! 話、聞いたれよ! それが仕事ちゃうんかえ……かわいそうに」と途中から涙で声を詰まらせることも数え切れずありました。政治家の汚職などには机を叩きながら「おまえらなにしに議員やっとんねん! やめてまえ! アホンダラ!」と体を震わせて怒ってらっしゃいました。