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本橋信宏作家

1956年、埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。私小説的手法による庶民史をライフワークとしている。バブル焼け跡派と自称。執筆はノンフィクション・小説・エッセー・評論まで幅広い。“東京の異界シリーズ”第5弾「高田馬場アンダーグラウンド」(駒草出版)発売中。「全裸監督 村西とおる伝」(新潮文庫)が、山田孝之主演でNetflixから世界190カ国同時配信決定。

オーディションに“付き添いで行ったら受かってしまった”…は都市伝説か?

公開日: 更新日:

 男女の恋愛力学も似たところがある。

 エグゼクティブが集う六本木の異業種交流会で見聞きした出来事がある。

 華やかな輪の中心に売り出し中のモデルがいた。会場のカクテル光線に照らされ、1級建築士、公認会計士、大手商社マン、テレビ関係者といったモテ部類に入る男たちが彼女を口説く。

 大手商社マンと話が盛り上がると、1級建築士が負けずに割って入る。当のモデルはどちらの男も憎からず思っている様子だ。

 すると1級建築士の事務所スタッフが、緊急案件を伝えにやってきて一言二言話すと、その場から消えた。

 パーティー終了。

 モデルのハートを射止めたのは、1級建築士でも大手商社マンでもなかった。事務所からの言付けを伝えにやってきたスタッフだった。

 彼はパーティー参加者ではなかったから、会場に横溢する口説きモードとは無縁だった。それがよかった。クールに見えて、かえって魅力的に映るのだ。

 付き添いで行ったら受かってしまった伝説は、嘘ではなかった。

【連載】本橋信宏 萌える火曜日

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