映画「箱男」の魅力とは…安部公房の世界を“娯楽”と“現代”に引き寄せた

公開日: 更新日:

 対して今回の「箱男」は、石井監督が原作者が93年に亡くなる前に直接会って映画化権をもらったときに、唯一の条件として「娯楽にしてくれ」と言われたもので、原作世界を尊重しながらエンタメに引き寄せているのが特徴である。

 基本の物語は、段ボールをかぶってのぞき窓を開け、完全に孤立することで社会を勝手に見つめて匿名性を獲得した“箱男”(永瀬正敏)が、彼からその座を奪おうとする“ニセ箱男”(浅野忠信)と対決するというもの。

■SNS全盛の日本は“1億総箱男化”

 昨年夏、撮影現場にお邪魔して石井監督に話を聞いたが、彼は原作を読んだ時、“箱男”をダークヒーローのように感じたという。ただそれはマーベルもののような唯一無二のスーパーパワーを持つ存在ではなく、段ボールをかぶれば誰でもなれるところに日本的な面白さを覚えたとか。また石井監督は、段ボールをかぶらずとも誰もが匿名性を獲得しているSNS全盛の現代を思うと、日本はすでに“1億総箱男化”していると感じて、このテーマが今にも通じると改めて思った。逆に言えば安部公房が原作を書いた1973年から半世紀が過ぎ、時代の気分が彼の小説に追いついたともいえる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動