新橋演舞場vs歌舞伎座は「朧の森に棲む鬼」の圧勝…21世紀の歌舞伎新作では最も成功
12月の歌舞伎は、2劇場で競い合っているが、面白さでは新橋演舞場の『朧の森に棲む鬼』の圧勝だ。2007年に劇団☆新感線に松本幸四郎(当時は市川染五郎)が客演した、中島かずき作、いのうえひでのり演出の作品を、「歌舞伎NEXT」として、歌舞伎俳優たちが演じる。
今回はダブルキャストで、主役のライと悪役のサダミツを幸四郎と尾上松也が交互に演じる。王になる野望を持つ青年ライが謀略と陰謀を重ねて王座を掴む物語で、セリフ劇の部分と、壮絶なアクションの両方がすばらしい。アクション部分で主役になるのがライの弟分キンタで、尾上右近が緩急自在に演じる。
ダブルキャストの両方を見たが、幸四郎のライは最初から悪人で、そのバケの皮がはがれていく感じなのに対し、松也のライは野心はあるがそれほどの悪人ではないのが悪事に手を染めていくうちにだんだんとダークサイドへ落ちていく感じ。アプローチが異なるのでどちらがいいとか悪いではなく、甲乙つけ難い。もうひとつのサダミツは、自分は賢いと思っているがライによって破滅するキャラクターで、これは幸四郎のほうがコミカルさがあってうまい。