追悼・万代博実さん 芸能界で独自路線を貫いた異才だった
芸能事務所アルファエージェンシーの代表・万代博実が肺がんのため2月11日に亡くなった。享年74。
アルファエージェンシーは豊川悦司、萩原聖人、余貴美子、和久井映見、中村ゆり、柄本佑らが所属し、若手の伊藤沙莉はNHKの朝ドラ「虎に翼」の主役でブレークしたばかり。まさに順風満帆だっただけに、万代の急逝が惜しまれる。
アルファエージェンシーは1970年代当初、女優・中島葵の個人事務所としてスタートした。中島葵は溝口健二監督の「雨月物語」などで知られる名優・森雅之の娘。つまり作家・有島武郎の孫にあたるが、父との確執もあって、文学座、黒テント、日活ロマンポルノなどで演技派として活躍したものの91年に病死した。
この時、追悼本出版に尽力したのが万代だった。というのも中島は69年の東大全共闘と三島由紀夫との討論で名を馳せた俳優・演出家の芥正彦のパートナーであり、万代は芥の舞台を制作するなど、芥、中島、万代の3人は固い絆で結ばれていた。
78年に3人は「劇団ホモ・フィクタス」を結成。旗揚げ公演「20C叙事詩 悲劇・天皇祐仁」は三百人劇場での上演が決まっていたが、運営の現代演劇協会が拒否。その後、旧俳優座劇場で初日を迎えたが右翼団体が街宣車を劇場に横付けし、戦闘服の構成員が劇場に乱入。舞台に空き缶を投げ入れるなど公演を妨害したため、警官隊が駆け付けるも公演は中止になった。