令和版「忠臣蔵」新旧豪華共演のドライブ感 12年ぶり歌舞伎座で通し上演
しかし全体を通せば、仁左衛門の大星由良之助を堪能する月だ。四段目・七段目とも、本心をなかなか明かさない役だが、伏線をきちんと提示するので、分かりやすい。その緩急自在さにはドライブ感があり、舞台上の若い武士たちだけでなく、観客までも振り回されるが、それが心地よい。
この仁左衛門とダブルキャストとなったのが松緑と愛之助。なかでも不利な闘いを強いられたのが四段目の由良之助を演じる松緑だが、仁左衛門に敵うわけがないとの開き直りがいいほうに向かったのか、たしかに敵うわけはないのだが、それはそれで立派な由良之助になっていた。
どういう事情があるのかは知らないが、今回は大星役者になるべき團十郎と幸四郎が加わっていない。ところが、その喪失感を抱かせなかった。團十郎と幸四郎は奮起しなければならない。
その團十郎は、3月はシアター・ミラノ座で新作「SEIMEI」に出ていた。安倍晴明を主人公にしたものだが、何を見せたいのか分からない凡作。團十郎はインタビューで、「役者泣かせの脚本」「今回は、いち役者として向き合いたいと考えています」と語っていた。演出には関わらないと宣言したのは、芝居の出来に責任を持てないという意味だろう。團十郎が脚本の悪さを認識していたようなのが、救いである。
(作家・中川右介)