慶応幼稚舎の願書備考欄に「親族が出身者」と書くメリットは? 縁故入学が横行していた過去の例
「慎太郎さんは一橋大出身で慶応とは関係がないが、叔父の裕次郎さんが塾高出身。何より大きいのは長男の伸晃さんが中学から慶応普通部に入学したこと。慶応への橋頭堡を築き、弟たちの幼稚舎への道を切り拓いた」(慶応大教授)
慶応大理工学部教授だった千住鎮雄氏の子どもの博、明、真理子、ファッションデザイナー森英恵氏の孫の研、勉、泉、星の兄妹も幼稚舎出身だ。挙げだしたらきりがないが、ここに名前が登場したOB・OGたちはいずれも20世紀中に幼稚舎に入学している。21世紀に入ると、こうした例はガクッと減る。99年4月から3年半にわたって幼稚舎の舎長(校長)を務めた金子郁容・慶応大教授(現名誉教授)が入試改革に踏み切ったからだ。
「自身も幼稚舎出身の金子先生は縁故入学が横行していたことを承知していた。これを変えなければ時代に取り残され、名門小の地位も失うと危機感を抱いていた」と振り返るのは金子氏をよく知る前出の教授だ。入試は受験者本人の実力で判断するべきという強い意志を金子氏は持っていた。
改革のひとつは、願書の家族の欄を簡素化したことだった。まず、祖父母の欄をなくした。それまでは、祖父母の氏名に加え、学歴や経歴まで書かせていたのだ。