著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

苦境続く成人映画…日活ロマンポルノ50周年の新作製作に期待すること

公開日: 更新日:

 日活ロマンポルノが50周年を迎えた。東京に出てきた10代後半以降の若かりし頃から、夢中になって封切り作品を追いかけた筆者としたら、まさに感無量である。その歴史、思い出話、好きな作品については書かない。半世紀が経った今の時代に、ロマンポルノはどんな意味があるのか。そこがとくに肝要と考える。

 その矢先、日活が記念プロジェクトとしてロマンポルノの新作を製作するとの報を聞き、嬉しくなった。5年前の45周年でも日活はロマンポルノの「リブート(再起動)」作品を5本製作、公開している。そのとき、キネマ旬報で「まだまだリブートは続く」と書いた。実現してくれたのである。

 記念作品は3本。金子修介、白石晃士、松居大悟の3監督が手がける。タイトルや俳優陣はまだ決まっていない。それぞれ、往年のロマンポルノの人気ジャンルでもあった「百合」「SM」「偏愛」をテーマにするという。どのような作品になるのかは現段階ではわからない。

 そこで一つ考えてみたい。絡みのシーンをはじめとする、いわゆる「性的な描写」「濡れ場シーン」を、どのように撮ってくれるのかということだ。つまるところ、劇場用の「ポルノ」が今の時代に何を描き、どのような意味を見出してくれるのか。ここへの果敢な挑戦から広がるテーマ、映画表現の飽くなき追及こそ、ニューロマンポルノの要と考える。

 ロマンポルノという名称を改めて吟味してほしい。「ロマン」は「浪漫」というより「物語」を意味する。これに「ポルノ」という語がついている。どちらが、役割的に上か下かということではない。この2つが強力に結合しているところにロマンポルノの栄光があったと、筆者などは考えてきた。

 それも欧米のように本番ありきの「ポルノ」ではなく、「擬態」としての性的描写だ。だからこそ持続力があり、作る側も奔放な映画の表現力を構築できた。観客側からすれば、さまざまな箇所に一層想像力を膨らませた。ロマンポルノの真骨頂だったと思う。

劇場用「ポルノ」の存在意義

 ところで、映画館で「ポルノ」が上映されることがめっきり減った。その理由をことさらあげつらうこともないだろう。ピンク映画といわれる成人映画を製作するOP PICTURESは、今年は12月までに20本の新作を公開するという。もちろん、かつてと比較すれば、圧倒的に少ない。国内で成人映画を継続的に製作、公開しているのは、今ではOP PICTURESのみだ。

 ちなみに成人映画の専門館は全国で20館を切っているという。こちらもめっきり減ってしまったが、そこを足場に監督、女優など新しい才能も育っているものの、映画館向けの成人映画の状況が厳しいのは改めていうまでもない。

 ニューロマンポルノは、そのような状況下で製作、公開される。もっとも、成人映画の専門館での上映はしない。5年前のリブート作品がそうだったように、ミニシアター系での上映となる。女性層も視野に入ることだろう。マーケットはそれほど大きくはないが、確かな客層を得て、ロマンポルノが新たな市場性を獲得すると、「ポルノ」の裾野が広がる。

 さきのOP PICTURESも、その市場性をめぐって、一部の作品をミニシアター上映するなど、試行錯誤を続けている。だから、今問われているのは、劇場用「ポルノ」の存在意義だと思う。なぜ作るのか。誰が見るのか。男性目線、女性目線(作り手、観客双方の)というようないい方で「ポルノ」は成立するのかどうか。

 考えることはいっぱいある。ニューロマンポルノが、その存在意義を見出す新たなチャレンジになってほしいと切に期待する。

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