著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

手術後の腸閉塞予防にガムが有効

公開日: 更新日:

 開腹手術を受けた後、一時的に腸の運動が低下し、腸管の内部が詰まってしまう腸閉塞を起こすことがあります。「術後イレウス」とも呼ばれるこの症状は、胃や大腸の手術後に発症しやすいといわれています。術後の腸閉塞は、その症状だけでなく、入院期間を延ばしたりするなど、患者さんにも負担を強いる重大な合併症です。

 2015年2月、英国の外科専門誌に興味深い論文が掲載されました。なんと「手術前と術後にガムを噛んでいると、術後腸閉塞を発症しにくくなる」というものです。

 この研究は、18歳以上で、大腸の開腹手術を受けた120人(平均67歳)が対象となっています。被験者は「ガムを噛むグループ」(58人)と、「ガムを噛まず、プラセボの皮膚パッチを腰に貼付するグループ」(62人)に割り付けられました。ガムを噛むグループは手術3時間前から、1時間当たり少なくとも3個以上ガムを噛み、また術後3時間以降もできるだけ早くガムの咀嚼を再開し、それを食事摂取の再開まで続けました。

 その結果、腸閉塞の発症は、ガムを噛んでいないグループの48%に比べて、ガムを噛んでいたグループでは27%と、統計的にも有意に減少しました。入院期間(中央値)に関しても、ガムを噛んでいないグループの14日に比べて、ガムを噛んでいたグループでは9・5日と、統計的にも短いことが示されました。

 もちろん、患者さんが医師の許可なしに、手術前後にガムを噛むという行為は現実的には難しいでしょう。ただ、医学的にはその有用性が示されており、副作用リスクもほとんどないことから、腸閉塞の予防策として考慮したいところです。

【連載】役に立つオモシロ医学論文

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    「かなり時代錯誤な」と発言したフジ渡辺和洋アナに「どの口が!」の声 コンパニオンと職場で“ゲス不倫”の過去

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    「よしもと中堅芸人」がオンカジ書類送検で大量離脱…“一番もったいない”と関係者が嘆く芸人は?

  1. 6

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 7

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  3. 8

    米国で国産米が5キロ3000円で売られているナゾ…備蓄米放出後も店頭在庫は枯渇状態なのに

  4. 9

    うつ病で参議員を3カ月で辞職…水道橋博士さんが語るノンビリ銭湯生活と政治への関心

  5. 10

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に