亡くなる時期がある程度予想できる「がん」で餓死が理想

公開日: 更新日:

■自宅でぬくもりを感じて逝きたい

  ネズミは寿命の3年くらいでがんの発生率が急激に高くなります。一方で、ゾウのように人間の100倍近く細胞数が多いにもかかわらず、がんを抑制する遺伝子の数が多いせいなのか、ほとんどがんにならない動物もいます。

 乱暴な言い方をすれば、がんは病気というより、「死に向かって老化を進めるための自爆装置なのではないか」と考えています。その意味で、がんになるということは神様がその人や動物に与えた命を全うしたということであり、細胞がダメになるまで生き抜いた証拠だと思うのです。

 生き物である以上、死ぬのは避けられません。そのふちに立たされるとさまざまな不安、恐怖、未練が襲ってくるでしょう。それを断ち切り、死を受け入れるためには準備が必要です。私は「自分史」を書きました。子供たちや孫たちに自分の生い立ちや考えを知ってもらうことが生への未練を捨て死を受け入れる一助となると考えたからです。

 私はある程度の治療を終え、死が迫ったら病院から自宅に戻るつもりです。人の五感のうち、聴覚だけは最後まで残ると言います。たとえ寝たきりで意識がないように見えても自宅の枕元で家族の営みを聞き、ときには妻に添い寝してもらいながら、ぬくもりの中で最後の時を迎えたいのです。

▽いしかわ・たかとし 1939年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、がん研究所を経て89年東京大学医学部病理学教室教授。97年東京大学医学部長。化学発癌の実験病理学的研究に従事。常陸宮殿下の共同研究者として有名。

【連載】医師語る 「こんな病気で死にたい」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊川怜の元夫は会社が業績悪化、株価低迷で離婚とダブルで手痛い状況に…資産は400億円もない?

  2. 2

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  3. 3

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  4. 4

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  5. 5

    斎藤元彦知事ヤバい体質また露呈! SNS戦略めぐる公選法違反「釈明の墓穴」…PR会社タダ働きでも消えない買収疑惑

  1. 6

    渡辺裕之さんにふりかかった「老年性うつ」の正体…死因への影響が報じられる

  2. 7

    水卜ちゃんも神田愛花も、小室瑛莉子も…情報番組MC女子アナ次々ダウンの複雑事情

  3. 8

    《小久保、阿部は納得できるのか》DeNA三浦監督の初受賞で球界最高栄誉「正力賞」に疑問噴出

  4. 9

    菊川怜は資産400億円経営者と7年で離婚…女優が成功者の「トロフィーワイフ」を演じきれない理由 夫婦問題評論家が解説

  5. 10

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”