終末期に胃ろうは必要か?
口から食べられなくなった患者さんのお腹に穴を開け、カテーテルを通して直接栄養剤を送る「胃ろう」。一度つけたらなかなか取り外せない、意識もなく、ただ生きているだけの患者さんをつくるだけ、などの批判がある。医療現場でも賛否の声が上がる。
その医療コストは、病院施設か在宅かによって開きがあるが、自己負担金は大ざっぱにひと月4万~6万円である。
「胃ろうを一時的につけることで元気になる人もいる。そういう人は大いに活用すればいい。しかし、高齢者がつけると寝返りも打てず、黙ってじっと横たわっているだけ。病院にはそうした高齢者が20万~30万人いるといわれています。終末期の高齢者に、こうした過剰な延命医療を施すことは、本人にとって、果たして幸せなことでしょうか。むしろ、本人を苦しめることにならないか。私はもっと自然に、安らかな死を迎えさせてあげたいと、早くから『平穏死』を提言してきました」
こう言うのは特別養護老人ホーム「芦花ホーム」(東京・世田谷)の石飛幸三常勤医師だ。
石飛医師は血管外科医としてドイツの病院や「東京都済生会中央病院」(退職時、副院長)で長年、患者を治療してきた。現在の「芦花ホーム」の常勤になって12年を迎えるが、現在も毎日、老衰の胃ろう患者と向き合っているという。