「覚悟はできている」と考えていた患者が3カ月の命だと告げられて考えたこと
「3カ月」という数字がRさんの心にズシンと響きました。急に病院の廊下、待合室の景色が違って見え、空気が変わってしまったような気がしたといいます。このまま病院にはいられない気がして、急いで帰宅したそうです。Rさんは、自宅に帰ってからも何か落ち着かなくなっている自分に気づきました。
「あれほど『覚悟はできている』と思っていた俺はどこに行ってしまったんだ。3カ月後に俺は死ぬ。誰だっていつかは死ぬ。それなのに、俺はどうしたんだ。何が怖いんだ……」
2種類目の抗がん剤の点滴を受ける時、Rさんは一方の腕で震えを抑えながら、注射をしてくれる医師に「覚悟はできているつもりですが、どうしてあと3カ月の命なのに抗がん剤をやるのですか?」と尋ねました。すると、40歳代と思われるその医師からこう言われたそうです。
「3カ月と決まったわけではないでしょう? 抗がん剤が効いたらもっと生きられますよ。誰だって生きたいのは当たり前じゃないですか。きっと効きますよ。一緒にがんばりましょう!」
自分の目を見てそう言ってくれた医師の言葉を聞いて、Rさんは頭の中で何かが光ったような気がしました。