中咽頭がん<3>大震災で手術延期も 強烈に励まされたこと
42歳の誕生日を迎えたばかりの当時の三枝さんは、その時の気持ちを「がん治療の節目となる5年生存を超える47歳まで生きられるかなと不安に思いました」と語る。
手術のリスクについて、担当医の説明が続いた。
「腫瘍が神経に近かった場合、顔面神経、舌下神経、副神経などいくつかの神経機能を失うことになります」
三枝さんはリスクを了承し、手術日を3月17日と決めた。ところが、予期せぬアクシデントが起こる。3月11日の東日本大震災である。病院施設の機能が支障を来し、手術日が延期されたのだ。結局、22日に入院し、手術は翌日の23日に変更される。
「大事な手術日が延期されるなんて、私はもうダメなのかと落ち込みましたね。その一方、テレビで1000年に1度というあの大津波を目にして、“こんな試練に遭いながらも生きている人もたくさんいる”と感じ、強烈な励ましになりました」
5時間に及ぶ手術を受けて麻酔から覚めると、看護師から「三枝さん、手術は成功しましたよ」と告げられた。