妊娠を希望する女性患者は弁を交換する再手術が必要だった
■生体弁であればワーファリンを飲み続ける必要はない
そこで、機械弁から生体弁に交換する弁置換術を再び行うことにしたのです。生体弁はブタやウシの弁などを人間に使えるように処理したもので、自身の弁に近く血栓ができにくい特徴があります。ただ、耐久性が低く、35歳前後の患者さんでは10~15年くらいで劣化して、硬くなったり穴が開いたりすることが予想されます。そうなると、弁を交換する3度目の手術をしなければなりません。
機械弁のままであれば、再手術する必要はありませんし、問題なく日常生活を送れます。それでも、子供が欲しいからと生体弁への交換を希望されたのです。
通常、正常に機能している人工弁を外して新たな弁に交換するという手術は絶対に行いません。しかし、「入院して抗凝固薬の点滴を受けるなど管理出産の実施が難しい」「抗凝固薬を服用しているのに過去に脳梗塞や弁のトラブルを起こしたことがある」といった患者さんは、妊娠・出産のために薬を切り替えることが困難です。そういった事情があるときに「弁を交換する」という選択肢が出てきます。彼女の場合もそうでした。