カテーテル治療のマイトラクリップは循環器内科が主導を
昨年9月、東大病院で行われた「マイトラクリップ」という最先端のカテーテル治療を受けた41歳(当時)の男性が亡くなる事故がありました。その患者は拡張型心筋症と僧帽弁閉鎖不全症を抱えていて、心臓の中にある僧帽弁がうまく閉じなくなって血液が逆流する状態を改善するために行われた治療でした。
前回も説明したように、マイトラクリップは先端にクリップの付いたカテーテルを下肢の静脈から挿入して左右の心房間を通過させてから僧帽弁に到達させ、ずれてうまく閉じなくなっている2枚の弁の両端をクリップで留める治療法です。
マイトラクリップが登場する以前の僧帽弁閉鎖不全症に対する治療は、まず薬物治療で経過を観察し、不整脈や心不全といった自覚症状が出たり、2枚の弁をつないでいる「腱索」という線維組織が切れて弁がそっくり返ってしまっているような重症な状態が心臓エコー検査でわかった段階で外科手術を行うのが一般的でした。
しかし、患者の年齢や病状によっては開胸手術はリスクが高くなります。その点、カテーテル治療のマイトラクリップは開胸する必要がないので負担が少なく、外科手術のリスクが高い患者も受けることができます。