東大医学部卒の教授が語る 5年後治る病気・死ななくなる患者
エクソソームとは、体のなかに存在するいろいろな細胞から分泌される顆粒のこと。近年、遠く離れた細胞に情報を伝える役割を担っていることが解明されている。がんが転移する際に、エクソソームが元のがん細胞の情報を伝える働きをする。これを阻害して転移させない研究も進んでいる。
「ここに紹介した技術は、臨床応用のゴールが近いもので、人を対象とした治験が進行しています。創薬や医療機器開発のトレンドから5年後には実用化されている可能性が高いものです。進行中の治験が期待通りの結果を出したら、という条件付きではありますが、体の奥底にあって発見が遅れがちで、手術も難しく、再発も多い膵がんを含め、がんの治癒率は格段に上がると考えています」
ただ、これからの「治る」は、いまの患者の多くが期待している意味とは根本的に異なることを理解する必要があるという。
「大多数の病気は、病気前の状態に戻るという意味の『治った』にはなりません。医師は、治療で生命の危機を脱し、平穏に日常生活を送る状態を維持できるようになれば、治ったと考えています。今後の医療は病気と共存する『多病息災』を目指すことになるのです」