長嶋茂雄さんも心房細動による脳梗塞 予防に新たな選択肢
■出血リスクが高い薬をやめられる
心臓の4つの部屋のひとつ、左心房から耳たぶ状に突出する「左心耳」は血栓ができやすい部分。心房細動による脳梗塞の9割は左心耳の血栓が原因といわれている。左心耳閉鎖治療は、「ウォッチマン」を左心耳の入り口に留置し、血栓をできにくくする。先端に「ウォッチマン」をつけたカテーテル(細い管の医療器具)を脚の付け根の小さな切開口から入れ、心臓の左心耳に到達したら、「ウォッチマン」を膨らませる。
手術後には「ウォッチマン」を覆うように内皮化が進み、やがて体の一部のようになる。カテーテルの治療なので、メスで胸を開くことなく、体への負担は少ない。
治療自体は1時間前後で終了し、入院期間は2~3日。抗凝固薬はやめられ、出血のリスクが減る。左心耳閉鎖治療を受けた前出の91歳の男性は、貧血を全く起こさなくなり、今では読書や音楽・テレビ観賞といった趣味を満喫する生活を送っている。
国内10施設で54人の心房細動の患者を対象にした臨床試験では、実施2年後のフォローアップの結果が出ている。それによると、「ウォッチマン」留置後45日時点でワーファリンを中止できなかったのは1例。ただし、別の病気が理由だ。