第7波の直前だからこそ考えたい「新型コロナウイルス」との付き合い方
約3年前、中国・武漢から始まった新型コロナウイルス感染症。その後、ウイルスは幾度となく姿を変え、いまは肺の奥でなく、咽頭部で感染が広がるタイプに変化している。そのため、感染者激増の割に、重症者・死者数が少なくなっている。一方で、ウイルスに対抗するために開発したワクチンも効果が低下しているとされるものもある。そんな状況下で新型コロナとどう付き合うべきか? 公衆衛生の専門家である岩室紳也医師に聞いた。
「感染者が再増加して、効果の評価のないまん延防止等重点措置などが宣言されるまま規制生活を繰り返すのか。それとも感染経路対策を徹底しつつも感染数増にとらわれず新型コロナとオサラバして元の生活に戻るのか。いま、日本人は選択する時期にさしかかっていると感じています」
しかし、いまのままの日本で感染者増を無視する後者の選択を決断するのは難しい。かといって、前者の生活を続けるのはうんざりだ。
「それなら、副反応のリスクと効果を理解したうえでワクチンを打つか否かを選択しつつ、感染予防の原点に戻って各自が勉強し直して生活するしかありません」
まずワクチンだが、感染予防にも依然として一定の効果がある。岩室医師はそう考えている。それは全国で新型コロナの新規感染者が高止まりするなか、増加が目立つ沖縄県を見ればわかるという。同県では新規感染者数が3月13日の573人から4月13日には1656人と増加した。その一方で都道府県別のワクチン接種率を見ると1回目66.04%、2回65.09%、3回目36.34%と断然の最下位だ。
「むろん、ワクチン接種率が高くても人口密度が高いなどの理由で新規感染者数が増えているエリアもありますが、総じてワクチンを打っている人が多い地域は新規感染者数は減少傾向にある。ワクチンの本来の目的は重症化率を抑え、死者数を減らすことですが、感染者数を減らす働きも確実にあるということです。以前に比べてその効果は低下したとはいえ、BA.2の置き換わりが進む東京都で3回目の接種率が高くなるにつれ新規感染者数が頭打ちになっているのを見ても、いまも有効なのは明らかです」
しかし、ワクチンは副反応が付きまとう。また、ワクチンを打ったからといって感染を免れるわけではない。2回目、3回目接種後に感染した人もいる。接種後に死亡を報告されたケースも1500件を超えている。
「そうした副反応が一定の割合で起こる事実を受け入れつつ、ワクチンのベネフィットを享受するという選択肢も考えるべきだと思います」
■原点に立ち返り感染リスクの低い生活習慣を身に付ける
むしろいま気になるのは、“新型コロナは健康な人は感染しても軽症で済むから大丈夫な病気だ”と考える人が増えていることだという。
「重症化リスクの低い人は感染しても問題ないとは思いません。いまもインフルエンザよりも死亡リスクが高い病気ですし、倦怠感、慢性疲労、脱毛など後遺症で困っている人が多い。子どものなかには熱性けいれんが増えています。新型コロナはいまも感染しないように努力すべき病気です」
では、どうすればいいのか?
「ワクチンの有無にかかわらず、やはり、自分で考えて感染リスクを下げるしかありません。そもそも感染症は突き詰めて言うと、生活習慣病です。感染リスクの高い生活習慣を改め、リスクの低い生活習慣を身に付ける。それが大切です」
しかし、その重要性はこれまでも喧伝され、私たちはそれを実行してきたのではないのか?
「私はそうは考えていません。例えば新型コロナが感染拡大を始めた当初は何分もかけて頻回に手を洗うことの重要性が繰り返し強調されてきました。しかし、手洗いの目的は手に付いたウイルスが口、鼻、目に入らないようにすることです。大事なことは一日に何度も手を洗うことではなく、素手で食事をしたり、目をこするなど体内にウイルスが侵入しそうな行動をする直前に手に付着しているウイルスを洗い流すことです。換気にしてもそうです。窓を開ければいいのではなく、サーキュレーターなどで空気の流れをつくることでウイルスを拡散し屋外に排出することが大切なのです。調理や会食をする時に料理にかかった飛沫が口に入らないよう感染経路を遮断するにはどういう生活習慣を確立する必要があるかを考え、実行する必要があるのです」
新型コロナは正しく恐れ、感染症対策は正しい知識・情報をもとに自分の状態に合わせて冷静に決断・実行する。いまこそ、その基本に戻ることが大切だ。