年間1万6300人超ペース「梅毒」が引き起こす「目」の病気…視力障害の引き金に
成人では感染から1カ月前後の早期梅毒第1期には眼瞼や結膜にも感染の仕方によっては潰瘍を生じる場合があるが、梅毒による目の潰瘍は見逃されるケースも少なくないという。
「感染から1~3カ月ごろの早期梅毒第2期には、今回問題としている梅毒性ぶどう膜炎が多くなります。最初は前部ぶどう膜炎として虹彩毛様体炎を発症することが多く肉芽腫性を呈することもあります。ステロイド点眼薬に抵抗して虹彩前癒着や虹彩萎縮を残すこともあります」
後部ぶどう膜炎では、眼底に出血を伴い、網膜血管炎を生じる場合もみられる。視力を出すのに重要な視神経乳頭部に散在性の網脈絡膜炎を発症し、その後、網膜色素変性症様変化を生じることもある。硝子体混濁や強膜炎などもこの時期にみられる病態だという。
「第3期になると、眼瞼ゴム腫や二次性網膜色素変性症などがみられるが、治療は困難となります」
■眼科の診察だけではわからない
そもそもぶどう膜炎は梅毒由来か否かにかかわらず、先進国の失明の5~20%、発展途上地域では25%近くを占め、罹患者の3分の2が長期的に視力喪失を経験する。当然、生活の質(QOL)も低下する。ブラジルで梅毒性眼疾患の治療を受けた成人32人に視覚の生活の質を測定したところ、40歳以上あるいは視力の悪い人のスコアは低かったと報告されている。
「梅毒性眼疾患の重大性から、早期発見・早期治療は不可欠です。しかし、その多様な病態を考えれば、眼科医の診察だけで梅毒性眼疾患のリスクを知ることは難しい。梅毒と診断された人が眼科を受診するのはもちろんのこと、梅毒の疑いがある人は眼科医にその可能性を告知することも大切です」