寛解直前で数値が上昇…タレントの山本量子さん語るがんとの闘い
急に食事が取れなくなった
ところが昨年7月、急に食事が取れなくなったのです。ここ2年ぐらいおとなしくしてくれてるなぁと思っていたところでの卵巣がんの再発でした。
病院へ行くと、腫瘍がジャマをしてご飯が食べられなくなっていることが判明し、また手術を受けることになりました。私はまた2週間で仕事復帰できると思って、番組関係者にもそう言ってお休みをいただいたんです。でも、手術だけでは終わらない状態で、抗がん剤治療をしなければならなくなりました。そんなわけで2週間が9カ月になってしまいました。
手術のおかげでご飯が食べられるようになり、体力をつけたところで抗がん剤治療を受けました。今回は抗がん剤のほかに新しい薬「キイトルーダ」という免疫チェックポイント阻害剤も投与しました。抗がん剤の副作用で頭髪はもちろん、まつ毛まで脱毛。食事が食べられなくなって点滴と栄養ドリンクのみで数カ月を過ごしました。
でも、今年4月からは抗がん剤をやめて、月に1回のキイトルーダの点滴だけになりました。こちらの副作用は軽いので、主治医が「これなら仕事復帰できるんじゃない?」と言ってくださったのです。まだ治療は続行中ですけど、4月から少しずつ仕事に復帰させていただいています。
復帰して感じたことは、番組のみなさんが優しかったこと。いつ復帰できるか分からないのに待っていてくれるなんて通常はないことです。言葉にすると薄っぺらいですけど、「感謝」です。めちゃくちゃありがたい。お返しできないほどの恩をもらってしまったと思っています。
ラジオのリスナーの方々にも支えてもらいました。復帰した際に「泣きました」という書き込みをたくさんいただいたんです。実際に、これは偶然なんですけれど、叔父が膝の手術で入院していたとき同部屋の人がラジオを聞いて泣いているので、理由を聞いたら山本量子の復帰を喜んで泣いてくれていたそうなんです。それを叔父から聞いて、「そんな人、ほんまにいてくれてるんや」と感動しました。
社会の一員に戻れたことは心の安定になっています。実家で母親が作ってくれる食事を食べて、寝ているだけではどんどん“病人”になってしまうんです。治療費もかさむし、「自分って何だろう。迷惑かけてるだけやんか」と悲観的になってしまう。でも、仕事をしていると外に出て気分が変わるし、“病人”とは違う世界があることが救いになるんです。
がんばってもどうにもならないことがあるんだと学んだので、我ながら優しくなりました。病気前は何でも「がんばればなんとかなる」というタイプでしたし、人が悩んでいるとポンと解決策を返しちゃう。でも、寄り添って話を聞くことも必要なんですよね。
ただまあ、基本的にあまり沈まない性格みたいで、仕事をしているとリスナーの皆さんに楽しんでほしいから、勝手に明るくなって勝手に楽しくなっちゃうんです。
(聞き手=松永詠美子)
▽山本量子(やまもと・りょうこ) 1976年、大阪府出身。20代から関西を中心にタレント活動を始め、2013年にMBSラジオに本格進出。「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」「茶屋町ヤマヒロ会議」など複数の番組で人気を博す。現在は体調をみながらできる範囲で仕事復帰している。バンド「カンロサウルス」のボーカルも務めている。
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