ダニ媒介性脳炎は致死率が20%以上…アウトドア好きは知っておきたい
ところが、ダニ媒介性脳炎の診断に至らなかった人を対象に血液中の抗体を調べる血清疫学的研究を行ったところ、北海道内はもとより、東京、岡山、大分でも、ダニ媒介性脳炎だった可能性を示す抗体陽性者が確認された。また、栃木、富山、島根、長崎という北海道以外の地域で、ダニ媒介性脳炎ウイルスを持つ可能性がある野生動物も確認された。
「北海道のみ、と考えられていたのが、血清疫学的研究の結果によって国内に広く分布している可能性が示唆されました」(児玉医師)
今年になってなぜ2例立て続けに発生したのか、北海道以外の地域になぜダニ媒介性脳炎ウイルスが広がっているのか、はっきりしたことは分かっていない。札幌市でダニ媒介性脳炎ウイルスのワクチン接種を行う「おひげせんせいのこどもクリニック」の米川元晴院長は「野生動物と人間のエリアが近づいてきているのが一因では。札幌には大きな公園が複数あり、子供たちも遊びに行っているが、そういう場所でマダニに噛まれる危険性は十分にある」と指摘する。
マダニは前述の通り複数の病原体の媒介になるので、マダニ対策として、野外では肌の露出を極力なくす。上着や作業着は家の中に持ち込まない。シャワーや入浴でダニがついていないかを確認する。
ダニ媒介性脳炎に関しては、有効な治療薬がなく、ワクチンが強力な武器となる。児玉医師、米川医師ともに言うのが、「だれもに勧めるものではないが、野外活動をよく行うなどマダニによく噛まれる環境にある場合は前向きに検討することを勧める」。ワクチンは1歳から接種可能だ。