川口「グランドキャバレー レトロクラブ」ではシニア層に加えて平成世代も楽しんでいる
第31回 川口
このコラムを読んでくれている50~60代の友人たちと昭和な街で酒を飲もうということで赤羽にやってきた。
陽気もいいので結構な人出で賑わっている。呼び込みのカワイイ女子たちが店外で声を張り上げ、若い男性客が冷やかすシーンがそこかしこに。評判通りコスパの高い店が軒を連ねる。アタシらもその中の一軒に飛び込み、魚介類を肴に一杯。
腹も出来てちょうどよくアルコールが回ったところで、今回の目的地である「グランドキャバレー レトロクラブ」へ。
赤羽から1駅。川口は赤羽に比べてビルが多く、繁華街は少ない。駅近くのビル3階のドアを開けると、ミラーボールのきらめく店内が目に飛び込んでくる。黒ベストのスタッフ氏が席に案内してくれる。このときのワクワク感がたまらない。ステージでは生バンドをバックに本日の出演歌手が熱唱し、ステージ前のフロアでは地元の先輩がホステスさんとダンスを楽しんでいる。店内にはシニア層ばかりでなく平成世代も少なくない。
セクシーショーは満席状態
「遅い時間には現役サラリーマンのお客さまもたくさんいらっしゃいますよ。ポールダンスなどのセクシーショーがある日は満席状態です」
話してくれたのは店長の木下さんだ。
大きなL字形ソファに陣取ると、胸に源氏名の入ったバッジをつけたホステスさんたちがやってきた。お~、これぞまっとうなグランドキャバレー!
高度経済成長時代、大手のチェーン店は各都市に必ず一軒はあった。当時の働く男たちの息抜きの場というだけでなく、子供を抱えた女性たちの駆け込み寺のような存在だった。託児所があり、シングルマザーがちゃんと食べていける職場だったのである。それが時代とともに若くてかわいければ務まるキャバクラが席巻し、その後、熟キャバ、姉キャバ、何でもありのセクキャバなどが街にあふれた。そして今や大衆キャバレーの役割も終わろうとしている。赤羽のハリウッド、銀座の白いばら、新宿のロータリーなどが続けて幕を下ろした。
レトロクラブはそんな最中にオープン。6年目を迎えた。頑張ってもらいたいね。そんなわけでアタシの横についてくれたのはフィリピン出身のジェイちゃんと江戸っ子のカオルちゃん。2人ともシングルマザー。大衆キャバレーのいいところはホステスさんたちが背景を隠さないことだ。あっけらかんと生活感を出してくる。それがよくて昭和の男たちは日夜通ったのだろう。
女性が働きやすい環境
ステージでは連れのオッサンが生バンドをバックに「浪花節だよ人生は」を熱唱。ふと横を見ると「今度一緒にセブ島行こう」。懲りないオッサンがジェイちゃんの耳元で囁いている。
「この店のいいところは女性が働きやすい環境をつくってくれるところ。ユルいとこがいい」とカオルちゃん。そんなユルい雰囲気が客にも伝わる。シニアの先輩たちが足しげく通うのが分かる気がする。
ちなみに料金は90分ほど遊んで1万円弱。明朗会計。大事だね。
(藤井優)
○グランドキャバレー レトロクラブ 川口市栄町3-5-12 有川ビル3F