自治体が政府の下僕に…「地方自治法改正案」は緊急事態条項“先取り”で強権政治に拍車
さらに問題なのが、国の指示権に限定がないことだ。改正案の条文には、指示権を発動するケースについて〈大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合〉と書かれているだけ。発動要件に至っては、各大臣が〈特に必要があると認めるとき〉と、為政者の腹次第である。
指示権発動の場面も要件もあいまいなのに、驚くべきことに、発動は閣議決定で可能であり、国会承認が不要。事前に自治体の意見を聞く手続きになっているものの、あくまで努力義務にとどまる。国が「国民の生命を守るため」などの理由をこじつけさえすれば、いくらでも恣意的かつ無制限の運用が可能になりかねないのだ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「自民党の改憲草案の緊急事態条項の創設を先取りするような法案です。改憲をせずして緊急事態条項を実現し、有事の際の戦争準備を遂行しやすくする地ならしではないか。『重大事態』が明確ではない以上、地方自治が時の内閣の意のままにされかねません。自治体が政府の下請け機関になってしまうかどうかの分水嶺だと思います」
憲法を骨抜きにするような政府に好き勝手させてはダメだ。