気象庁が豪雨警戒情報を何度も出す理由…背景に「コーヒー1杯予算」の深刻事情
「戦争は外交交渉で避けられるが、災害は避けられない」
鈴木氏の著書には気象庁の幹部職員のこんな話が出てくる(取材は2020年)。
「気象庁の当初予算はこの10年間大体500億円後半から600億円。これを国民の人口で割ると一人当たり500円になるんです」
この職員は「つまりコーヒー予算」と自虐的に語ったという。
鈴木哲夫氏は「自然災害は有事と同じ」と位置付ける。これだけの災害大国なのである。国民の命と生活を守るのが政府の役割であるのならば、「防災」も「防衛」と同様に位置づけ、人も予算も割くべきではないのか。
「戦争は外交交渉で避けられるが、災害は避けられないのですからね。気象庁のOBも防衛力強化には43兆円もの予算をつけて、増税で賄おうとしているのに……と嘆いていました。災害だって有事。システム開発や大学との連携に予算が必要なのに、限られたものでは対応にも限界があるのです」(鈴木哲夫氏)
これだけ火山被害が多いのに、「火山庁」すらないのが日本だ。文科省内に「地震火山室」はあるが、できたばかりで予算は見通せない状況だという。完全に災害対応後進国なのだが、その理由も本書には書かれている。安倍元首相に近かった自民党ベテラン議員が鈴木氏にこんな告白をしているのだ。
「結局、災害はいつ起こるかわからない。それに対してかなりの時間や人員、体制、予算を費やしてずっと備えてやっていくのは政治的な費用対効果が低いということでしょう。災害対応はやっていて助かってもそれが当たり前、褒められはしないし、一方で失敗すればその時は何やってんだと非難囂々。票にもならないし手間がかかる。そんなことをやっている時間があるなら、外交やほかのことで得点を稼いだ方がいいということ。さらに災害は失敗しても『想像を超えた』『未曽有の』などという言い訳が通用するんです。だから真剣にやらない」