気象庁が豪雨警戒情報を何度も出す理由…背景に「コーヒー1杯予算」の深刻事情
気象庁には「避難しろ」という権限はない
驚くべき発言ではないか。災害大国なのに、与党の政治家がこれでは絶望的になってくる。能登の被災者が置き去りにされるわけである。そんな自民党政権が続いているから、構造的な問題もそのままだ。気象庁はなぜ、あれほどの頻度で警戒情報を流すのか。そこには構造的問題が横たわっている。
「どれだけ私たちが警報を出しても、危険だと何度も会見しても、私たちに避難しろという権限はなく、それは市町村、そしてもっと大きな政府などの行政に委ねられます。首長や首相です。首長や首相と密接に表裏一体の体制にしなければならないのではないか、とずっと思ってきました」(気象庁職員のコメント、本書より)
気象庁は当初、文科省の管轄だったが、現在は国交省の管轄下に移っている。危機管理を専門とする国会議員の間からは内閣府の管轄下にすべきだという声が上がっている。内閣府の下に置けば、官邸とつながり、自然災害の分析、予測、避難命令などが一元化し、危機管理がスムースに動くのだが、それすらやっていないのが自民党政治だ。水害をもたらす河川についても一級河川は国交相、二級河川は都道府県知事、準用河川は市町村長が責任者と完全に縦割り行政で、その弊害が何度も指摘されているが、改まっていない。
こんな脆弱な体制下で今年も列島に豪雨、台風、猛暑といった自然災害が襲い掛かる。猛暑について言えば、いまや完全な災害だ。消防庁によると、2023年の7月10~16日の1週間で熱中症の搬送者は8189人、うち65歳以上の高齢者が4484人で自宅内が3215人もいた。貧困でクーラーを控えているお年寄りもいる。早急な対策が必要なのだが、公立の図書館やショッピングセンターを「クーリングシェルター」に指定、特別警戒情報が発令された際には解放を求める運用がようやく、今夏からスタートする。半歩前進だが、遅すぎるし、一時避難ではどうにもならない。この国の政治家には鈴木氏の著書をじっくり読んでもらいたいものだ。
本書の最終章には、東日本大震災の被災者とずっと寄り添ってきたサンドウイッチマンや、災害対応に当たってきた県知事、元首相のインタビュー、防災省設置を訴えている石破茂氏や気仙沼出身の政治家、小野寺五典氏などの貴重な提言も載っている。
※鈴木哲夫氏の「解説動画」は【こちら】