「決断」を先送りすると、なぜ不安や心配に苛まれるのか? 脳神経外科医が解説
「私は優柔不断だから」というレッテル貼りはやめる
人生経験が長い年長者ほど、おしなべて決断が速いことからも、「決める」「選ぶ」が経験値によって左右されていることがよくわかります。
「経験値」とは言い換えると、過去の〝事例〟です。事例のインプットが多ければ多いほど、脳にとっては判断材料が増えるわけですから、処理速度が上がるのは当たり前の話なのです。だから、たとえ年長者でなくても、経験値をたくさん積むことは決断のスピードアップに直結します。
たとえば若い人でも、必要にかられて「決める」「選ぶ」という膨大な作業を長期にわたってこなしてきた場合、経験値の密度が非常に濃くなり、「決める」「選ぶ」が速くなることはあります。
つまり自分自身の生存のため、保身のため、磨き上げられた能力というわけです。
経験値を積むうえでは、もちろん結果的に「誤った決断」になることもあるでしょう。けれども、それを気にしすぎる必要はありません。(「社会的に迷惑をかけることが許されないケース」はもちろんのぞきます)
なぜなら、脳は成功事例より失敗事例のほうを強烈に記憶するものだからです。痛い経験こそ、よい糧となってくれる可能性が非常に高いからです。
「決める」「選ぶ」をすぐできる人になりたいなら、日常的に決断する機会を増やしていきましょう。
ドーパミン・コントロールの手法を利用すれば簡単です。
人の脳は「成功体験」をしたとき、ドーパミンが出て心地よい状態になります。その上で
ステップ① 自己暗示をかける
ステップ② スモールステップに分ける
ステップ③ ドーパミンを分泌させる
この①~③のステップのサイクルを繰り返すことで、うまく習慣化していくことを「ドーパミン・コントロール」といいます。
「決める」「選ぶ」機会を増やし、意識的に決断を行う。その直後に、「決断できた自分」を褒める(決して、後悔はしない)。
すると、成功体験を味わえたことに対してドーパミンが出て、満足感や達成感が得られます。また、「次に決断するときも頑張ろう」と思えるようになり、決断速度も速くなっていきます。
▽菅原道仁(すがわら・みちひと) 脳神経外科医。1970年生まれ。杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞などの緊急脳疾患を専門として国立国際医療研究センターに勤務。2000年、救急から在宅まで一貫した医療を提供できる医療システムの構築を目指し、脳神経外科専門の八王子市・北原国際病院に15年間勤務し、日々緊急対応に明け暮れる。その後、2015年6月に菅原脳神経外科クリニック(東京都八王子市)、2019年10月に菅原クリニック 東京脳ドック(港区・赤坂)を開院。その診療経験をもとに「人生目標から考える医療」のスタイルを確立し、心や生き方までをサポートする医療を行う。『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)、『成功する人は心配性』(かんき出版)、『成功の食事法』(ポプラ社)など著書多数。