「決断」を先送りすると、なぜ不安や心配に苛まれるのか? 脳神経外科医が解説

公開日: 更新日:

 物事の決断が早い人と遅い人。その違いを脳科学の側面から見てみると? 
 
 脳神経外科医の菅原道仁さんが、人をやる気にさせる「ドーパミン」の力を活用して脳をその気にさせる方法を綴った『すぐやる脳』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。

  ◇  ◇  ◇

 何かを「決める」ことは、たとえ楽しい事柄であっても、脳にとっては〝仕事〟ですから〝負荷〟となります。その証拠に、「決めた」あとはホッとするものです。決断を終えることで、脳は心配を減らすことができるのです。

 意思決定については、「大脳基底核」にある「線条体」という部位が大きな役割を果たしています。「決める」前の脳は多かれ少なかれ、不安や心配を抱えています。そのため、線条体の活動が活性化され、ネガティブな衝動に駆られたり、ネガティブな習慣に陥りがちになります。

 けれども、「決める」という行為は線条体の活動を抑制するため、大脳辺縁系を鎮静させ、心を落ち着かせてくれます。

「決める」ことは、ひとつの仕事が終わること。ですから脳にとっては「うれしい」ことなのです。とはいえ、「決める」という行為は、心情的には「面倒」です。

「完璧な判断をしなければならない」「間違いがあってはならない」と思い込むことが、ストレスとなることは明らかになっています。その結果、「腹側内側の前頭前皮質が過活動になる」とされています。

 一方、「ほどほどな判断でよい」「どんな判断でも大丈夫」と、ハードルを下げたときは、「腹側外側の前頭前皮質が活性化する」ことがわかっています。この状況は、脳に「状況をうまく管理できている」という肯定感を与えることになります。

 結果、脳にかかっていたストレスは軽減します。まとめてみると、「決める」ことを先延ばしすればするほど、脳が不安や心配を抱え込む時間は長くなります。

 早く「決める」という姿勢は、自分の脳をいたわることになるのです。ではいったい、どうすれば早く「決める」ことができるのでしょうか。

「決める」「選ぶ」をすぐできる人は、特別な能力に恵まれた人、というわけではありません。

「最適解を導き出す能力をもっているにすぎない」という事実が、科学的に証明されています。しかも、「その能力は、〝訓練〟次第で何歳からでも身につけていける」というのが定説です。「訓練」といっても、特殊なことではありません。

 ここで言う訓練とは、「決める」「選ぶ」という行為を何度も繰り返すことを意味します。平たく言うと、今まで多く「決める」「選ぶ」という行為を繰り返してきた人ほど、その速度が速くなっているというだけの話なのです。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 2

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末

  3. 3

    立花孝志氏の行為「調査要求」オンライン署名3万6000件に…同氏の次なるターゲットは立憲民主党に

  4. 4

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  5. 5

    別の百条委メンバーも兵庫県知事選中に「脅迫された」…自宅前に県外ナンバーの車、不審人物が何度も行き来、クレーム電話ひっきりなし

  1. 6

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  2. 7

    シニア初心者向け「日帰り登山&温泉」コース5選 「温泉百名山」の著者が楽しみ方を伝授

  3. 8

    斎藤元彦知事に公選法違反「買収」疑惑急浮上しSNS大炎上!選挙広報のコンサル会社に「報酬」か

  4. 9

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  5. 10

    吉田皇嗣職大夫 “灘高卒の超秀才”も悠仁さまの受験アドバイザーになりきれず…最近の推薦入試に疎かった?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」