酷暑対策としてアイススラリーに注目 甲子園ベンチ裏にも常備、シャーベット状飲料のスゴい効果
昨年に続く災害級の酷暑で、日本列島が沸騰している。熊本・甲佐町では、最高気温が35度以上となる猛暑日の国内最長記録を更新した。猛暑日の連続記録は各地で相次ぎ、熱中症警戒アラートは全国規模で点滅する。そんな中、熱中症対策として注目されているのがシャーベット状飲料のアイススラリーだ。
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超がつく炎天下、甲子園では熱戦が繰り広げられている。昨夏の大会では、出場選手のうち34人が熱中症の疑いで理学療法士の処置を受けたほか、観客ら241人が救護室で手当てを受けている。
さらなる暑さ対策が求められる中、高野連はこの大会で開幕から3日間に限り、試合を午前と夕方に行う2部制を導入。昨年から始まった5回終了後に10分間の休息を確保するクーリングタイムは当初、午後4時以降に開始する試合では実施しない方針だったが、その午後4時以降の試合で熱中症とみられる選手が続出したことを受け、大会本部は第4日から方針を切り替え、その時間帯の試合でもクーリングタイムを取ることを打ち出している。
■深部体温の上昇を抑制
実は、そのクーリングタイムなどで火照る選手の冷却に一役買っているのが、シャーベット状飲料のアイススラリーだ。「ポカリスエットアイススラリー」(大塚製薬)と「リポビタンアイススラリー」(大正製薬)が2大商品で、夏の甲子園では主催者側がベンチ裏にアイススラリーを用意している。一体、どんな商品なのか。大正製薬の広報担当者が言う。
「アイススラリーは、細かい氷の粒子が液体に分散した状態の飲料です。通常の氷は結晶が大きくて流動性が低いのに対し、アイススラリーは結晶が小さく、流動性が高いため、体の内側から効率的に冷却できます。分かりやすいように、37度の温水に同量の『アイススラリー』『凍らせたスポーツドリンク(糖酸液)』『通常の氷』を入れて20度に下がるまでの温度推移と時間を計測。すると、『凍らせたスポーツドリンク』と『通常の氷』では、20度に下がるまで50秒前後かかりますが、『アイススラリー』はわずか数秒。冷却効果は圧倒的です。ヒトでの試験でも、深部体温の上昇が抑制される効果が認められています」
深部体温は、直腸や食道、鼓膜などで測定する体の内部の体温で、37度前後に保たれている。一般に脇の下などで測る皮膚温より0.5~1度ほど高い。安全に体を動かすには深部体温の上昇を防ぐことが重要で、39度以上で認知機能や判断能力が低下。40度に達すると、危機的レベルといわれる。
同社は、広島大大学院の長谷川博教授と共同で男性アスリート10人に、常温のアイススラリーとマイナス4度のアイススラリーを1時間の運動の間に取ってもらう実験を実施。マイナス4度のアイススラリーを摂取した時は、運動後も深部体温が39度未満に保たれていたが、常温のアイススラリーではピーク時は39度を超えた。そのため注意力を測る試験では、マイナス4度の時は注意力が維持されたが、常温摂取時は注意力が大きく低下した。
この共同研究は、昨年フランスで開催された欧州スポーツ科学学会で発表され、注目を集めたという。
一方、大塚製薬は産業医大や北九州市消防局と共同で防火服を着て暑熱環境下で作業し、深部体温がどう変化するかを研究。男性消防隊員12人を対象にブーツや手袋、ヘルメットを含む防火服を着てもらい、活動前にスポーツドリンク(イオン飲料)またはアイススラリーのいずれかを摂取。その後、気温35度、湿度50%に調整した人工気候室で消火活動をイメージした自転車こぎ運動をしてもらい深部体温の変化を調べた。
その結果、アイススラリー摂取時は、直腸で測る深部体温が38度未満に抑えられたが、スポーツドリンク摂取時は38.5度近くまで上昇。この研究も、アイススラリーの冷却効果を後押ししている。