大雨や大洪水への備え…警戒レベル4「避難指示」での避難は遅すぎるケースを知っておく
非常に強い勢力の台風7号は、当初予想された進路より東にズレたことで、関東地方などの一部に倒木や停電は見られたものの、懸念されたほど大きな被害はなかった。しかし、台風シーズンはこれからが本番で、豪雨は毎年のように全国各地で相次ぐ。雨量は増加傾向だけに、改めて豪雨の対策と避難についてチェックしよう。
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台風は各地の気象官署などから300キロ以内に入ると「接近」で、台風の中心が日本列島の海岸線に達したときが「上陸」と定義される。今年は接近数が3個、上陸数が1個。気象庁によると1991~2020年の平均で、接近数は11.7個、上陸数が3.0個だから、このままのペースでいくと台風の接近数も上陸数も例年より少ないかもしれない。
集中豪雨をもたらす原因は、台風のほかにもある。そのひとつが最近話題の線状降水帯だ。積乱雲が次から次へと発生して、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで生まれる雨域と定義される。長さ50~300キロ程度、幅20~50キロ程度のエリアで強い雨が降る。
たとえば、先月24~27日にかけて秋田や山形での記録的な大雨は記憶に新しい。中でも秋田の大清水雨量観測所では、総雨量が559ミリを記録。多くの観測所で観測史上1位の雨量で、7月の1カ月分の平年値を大きく上回る雨が、わずか3日で降ったことになる。そんな中、山形では線状降水帯が2回発生、大雨特別警報が2回発表されている。
■3時間130ミリ超は47年で2倍に増加
気象庁気象研究所が1976年から2022年まで47年間のデータから、3時間の積算雨量が130ミリを超える集中豪雨の発生数を調べたところ、全国では2倍に増加。特に九州で多く、2.6倍だった。
時期で多いのは6~7月で、全国では3.4倍、九州では3.5倍にハネ上がる。その集中豪雨のうち、台風や熱帯低気圧を除くと、3分の2に絡んでいるのが線状降水帯だ。
国土交通省がまとめた「水害レポート2023」によると、時間雨量50ミリ以上となる短時間強雨の年間発生回数は、14~23年の10年間の平均で330回。85年までの10年間の平均に比べて約1.5倍だ。
こうした各種調査を見れば、全国的に集中豪雨の発生数が増えていることが分かる。その最大の被害エリアが九州で、先日の秋田や山形のケースもあるように、いまや集中豪雨と無縁な地域はないといっていい。しかも想像を絶する大雨は、梅雨から夏にかけてだけでなく、時季を問わずドンと押し寄せる。大雨や大洪水への備えは、必ず必要だ。
では、どうするか。森総研代表の森健氏は、静岡県下田市や住友電装などで防災や安全管理などに携わり、官民双方の現場を知る防災のプロ。その森氏に聞いた。
「当たり前ですが、自宅や勤務先などのハザードマップはしっかりとチェックして、自分がどれくらいのリスク下で生活しているのか把握しておくことが重要です。その上で国や自治体、気象庁などが発する避難指示などはきちんと受け入れて、早め早めの行動を取ること。それが基本です。なぜ、そんなことを改めて言うのかというと、都市部で自然を感じにくい環境で生活していると、身の回りの災害リスクをイメージしにくいため、避難行動が遅れやすいのです」
タワーマンションでなくても、ある程度の高さのマンションに住んでいると、「道路が冠水しても、ウチは大丈夫」と軽く考えても仕方ない。そもそも自宅や職場などの近くに川や海などがなければ、テレビのアナウンサーが臨場感たっぷりに「早く逃げてください」「身を守る行動を取ってください」などと迫りくる危機を伝えても、その危機をイメージしにくいだろう。19年の台風19号では、冠水による被害でタワマンが停電したこともあったのだ。
「都市部の川は暗渠化されていて、古くからそこに住んでいないと、川があることに気づかないでしょう。東京だと、川を覆った部分は緑地帯になって、憩いの場だったりしますから。しかし、都市部の水害で怖いのは、そういう暗渠化された川や下水などの内水氾濫なのです。ですから、見えないものを可視化して教えてくれる情報手段をいくつか持っておくことが不可欠。具体的には、天気予報アプリで雨雲の動きを確認するだけでなく、その時点での地域の雨の模様を動画で確認する方がベターです。NHKの『ニュース・防災』アプリで『マップ』をタップして、さらに『河川情報・大河川』を選択すると、河川カメラからその時点の水位を見ることができます。リスクを強く意識するには、文字情報より動画や画像の方が適しているでしょう」
「Yahoo!天気」でもトップページの「メニュー」から「天気・防災情報」の「河川水位」を選んで、知りたい河川をタップすると、NHKと同様に水位が分かる。こうしたアプリをスマホに複数ダウンロードしておけば、イザというときの現状把握に役立つ。
「防災時の情報入手手段としてラジオが挙げられますが、こうした理由からワンセグTVの方がよく、クライアント企業が防災用に備蓄する場合はラジオよりワンセグTVをおすすめしています」