五島市立図書館(長崎県)島巡りをするように本との出会いを楽しめるユニークなレイアウト
映画やアニメの舞台としても知られる長崎・五島列島に、癒やしの空間がある。2023年4月に開館した五島市立図書館だ。
館内でまず目を引くのは、シンプルでモダンなデザインの外観からは想像もつかないその天井だろう。館長の野口良美さんはこう語る。
「この地は隠れキリシタンと深いつながりがあります。そのため、教会で見られるコウモリ天井を取り入れました。天井の高さは最大約7.6メートルで、そこに立体感が加わることによって非常に開放的です。天井と書架には五島列島産の木材を使用し、さらに東側と北側の壁の上部に設置された天窓からは自然光が差し込むため、全体的に温かみのある雰囲気に包まれます」
レイアウトも独創的だ。資料は分類や用途ごとに《一般書のしま》《児童書のしま》《おはなしのしま》……といった具合に分けられており、訪れる人はまるで島巡りをするかのように本との出合いを楽しめる。《雑誌のしま》には約120種の雑誌刊行物が並べられているのもうれしいポイントだ。《ティーンズのしま》には五島市出身の漫画家、ヨシノサツキ氏がこの島を舞台に描いた人気作「ばらかもん」が全巻そろえられていて、利用者から「大好評」だという。
これらの《しま》とは別にガラスで仕切られた郷土資料室には、約6000冊の蔵書が収められている。椅子やデスクも設置されており、じっくりと知的探求に没頭できる環境だ。
「長崎や五島列島の歴史に関する資料だけでなく、長崎にルーツのある作家の著書や、著名な俳優などの写真集も置いてあります。郷土資料というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、より多くの人に親しんでもらえるよう、開かれた空間を目指しています」(同)