昭和の名残を歩く…「治安が悪い」「買い物難民」「高齢化の波」という現実
桐ケ丘団地群
マニアの間では「都会の秘境」と親しまれる団地群だ。
JR赤羽駅から10分ほどバスに揺られると、大規模な「桐ケ丘団地」「赤羽西5丁目アパート」などの都営団地群が現れる。
昭和27(1952)年から続く桐ケ丘中央商店街には玩具店や駄菓子店、電器店、台湾料理店などが軒を連ねる。年季の入った子供用の遊具や色あせた看板がノスタルジーを感じさせ、週末には遠方から足を運ぶ団地愛好家も少なくない。
この団地に40年以上、居住する80代の男性に話を聞いた。
■独居老人「買い物難民」の現実
「商店街といっても、営業を続けているのは数えるほどで、シャッターを閉めた店は少なくない。まだ20~30年前は活気があって、食品から日用品など全てをここで賄えたから便利だったけど、今は厳しいね。私のように足も不自由になると、歩いて行ける範囲にスーパーがないので買い物が不自由だね」
全国の団地同様、住民の高齢化は、この団地群も例外ではない。2022年の北区の年齢別データによると、区全体の高齢化率が約25%に対し、桐ケ丘地区は約58%にのぼる。
桐ケ丘団地と道路を挟んだ向かいにある赤羽西5丁目アパート568室のうち、半数近くが空き部屋だ。同アパートに昭和49(1974)年の完成当初から住み続けているという70代の女性は高齢化の不安を口にした。
「私の号棟では約20軒のうち、10軒が空き家になっていますよ。夫や奥さんに先立たれ、子供も独立して1人暮らしの『独居老人』が少なくありません。住民同士、お互いに安否確認したり、区の高齢者見守り制度があるけど、急病などで体が動かなくなった時のことを考えると不安になることもある。建物内の共用部や敷地内の清掃は当番制ですが、足が不自由で掃除できない人も増えてきましたね」
近隣には再開発によって建て替えられたUR賃貸住宅が立ち並び、先の女性は「こちらの団地は取り残された感じが否めません」と寂しそうに話した。