1ドル155円接近に政府・日銀は策ナシ 防衛費43兆円は突破確実で忍び寄る「円安増税」
調達コストは爆騰
すでに円安や資材価格の高騰により、防衛省の調達コストは跳ね上がっている。今年度予算によると、大型輸送ヘリ「CH47」の単価は陸自の使用機種で1機175.5億円、空自機種で196.4億円だ。19年の「中期防衛力整備計画」(中期防)で見積もった平均単価は76億円で、それぞれ約2.3倍、約2.6倍も増えている。
最新鋭ステルス戦闘機「F35A」の単価は、中期防の116億円から今年度予算は140億円に。政府が防衛力強化に不可欠とする「イージス・システム搭載艦」の建造費は、2隻で約7840億円。20年に想定した4800億円超から1.6倍、3000億円も増加しているのだ。
防衛省は今年度予算を1ドル=137円の想定で編成しており、実際の調達額はさらに膨らむ恐れがある。円安が進むほど、防衛費43兆円の枠に収まらず、増税リスクは高まっていく。
「43兆円は米国の要求通り『GDP比2%』の規模ありき。為替レートの変動など意識せず、数字合わせで作成したものです。兵器調達は米国頼み。円安が続けば兵器ローンの後払いやメンテナンス代も膨らみます。超過を逃れるには米国に頭を下げ、兵器の購入量を減らすしかないのですが、今の日米関係では到底、不可能です」(軍事評論家・前田哲男氏)
政府は防衛費増額の財源として法人税・たばこ税・所得税を増税し、1兆円強を賄う方針だが、開始時期の決定は2度も先送り。まだ財源は確保できていないのに、防衛省の有識者会議や自民党の国防部会からは円安を意識して「43兆円の枠を見直せ」との声が上がる。円安増税は避けられそうにない。