小林製薬(下)企業体質を変えなければ存続不可
一雅の口癖は「小さな池の大きな魚」。誰も参入していない未開拓領域で大きなシェアを狙う戦略を意味する。開発に時間と費用がかかる医薬品より、手軽で1品あたりの開発リスクが低い日用品にシフトした。冷却ジェルシート「熱さまシート」や消臭剤「消臭元」、洗眼薬「アイボン」などヒット商品を連発した。
彼は「あったらいいな」をカタチ(商品)にすることに心を砕いた。ニッチな市場の開拓者、パイオニアになった。
一雅は小林製薬の“天皇”と呼ばれている。神聖にして不可侵な存在だ。76年に4代目社長になってから48年間にわたり代表権を保持し、トップの座に君臨している。
6代目社長の小林章浩(53)は一雅の長男。慶応義塾大学経済学部卒。2013年に社長に就任。機能性表示食品のサプリメントに経営の舵を切る転換点となった年だ。
機能性表示食品は事業者が機能性(健康の維持や増進に役立つ効果)と安全性に関する科学的根拠などを消費者庁に届け出れば国の審査なしで表示ができた。
小林製薬は2016年、グンゼから食品素材、紅麹の研究・販売事業を譲り受け、21年4月、悪玉コレステロールを下げると謳った紅麹コレステヘルプを機能性表示食品として消費者庁に届け出た。