エーザイ(上)創業家の世襲体制、限界を迎える…話題の“暴露手記”主要登場人物はほぼ全て実名

公開日: 更新日:

 今年5月に講談社から刊行された「リーマンの牢獄」という本が話題だ。同書は2008年、アスクレピオスという病院再生ベンチャーが丸紅を舞台に、米投資銀行のリーマン・ブラザーズから371億円を詐取したという「アスクレピオス事件」で主犯格とされた斎藤栄功氏が、15年の懲役を経た後に事件を振り返った手記だ。リーマンはこの逮捕の約3カ月後に破綻しており、斎藤氏はいわば「リーマン・ショック」のトリガーを引いた男ということになる。

 一見すると製薬会社のエーザイとは何の関係もないように思えるが、実は同社の今後を占う意味では、大事な要素をはらむ。そこには同族で代々、経営に当たってきた内藤家の“世継ぎ”の問題が微妙に絡まるからだ。

 現在のエーザイを率いるのは、内藤晴夫・代表執行役CEO。初代・豊次氏が1936年に前身の合資会社桜ヶ岡研究所(41年に日本衛材を設立し、55年にエーザイに社名変更)を設立してからの同社は同族経営で、晴夫氏は3代目だ。その晴夫氏が社長に就いたのが88年。元々はチョコラBBといった大衆薬が有名な売上高2000億円に満たなかった同社を、認知症とがんの製薬会社に特化させ、売上高7000億円企業に成長させた功績は立派なものだ。

 だが既に37年もの長期体制に突入。自身の年齢のこともあり、内外から経営交代の潮時とみられている。

 同社の場合、東証プライム上場企業にあって、内藤家が筆頭株主でないにもかかわらず、長男の景介氏への“世襲”が既定路線。同社は5月、景介氏を、常務執行役から代表執行役専務に昇格させる人事を発表し、体制を整えつつあるが、景介氏は36歳。晴夫氏が40歳で社長に就任したことを考えれば、早すぎではないのかもしれないが、当時ならいざ知らず、現在の「薬剤費抑制」「新薬開発コストの高騰」といった厳しい経営環境に置かれる製薬業界にあって、40そこそこの若者に舵取りを任せるのは心もとないというのは当然の見方だろう。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    青木さやかさん2度の肺がん手術を振り返る「症状らしいものが何もなく、間違いかなと…」

  2. 2

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3

    日本ハム新庄監督は続投する?しない? 目下2位と大健闘でも決まらない複雑事情

  4. 4

    阿部巨人V奪還を手繰り寄せる“陰の仕事人” ファームで投手を「魔改造」、エース戸郷も菅野も心酔中

  5. 5

    イメージ悪化を招いた“強奪補強”…「悪い町田をやっつける」構図に敵将が公然批判でトドメ

  1. 6

    大谷に懸念される「エポックメーキングの反動」…イチロー、カブレラもポストシーズンで苦しんだ

  2. 7

    なぜ阪神・岡田監督は大炎上しないのか…パワハラ要素含む「昭和流采配」でも意外すぎる支持

  3. 8

    徹底した“勝負至上主義”が生む誤解…特定チームのファンをブチギレさせ大炎上した発言とは

  4. 9

    愛川欽也さん壮絶死…がん脊髄転移、最期まで「仕事行こう」

  5. 10

    中日「ポスト立浪」に《古参OB》の名前が浮上!「チームをもっとも把握」との評判も