本田圭佑「虚像と実像」(1) 小4で中学サッカー部に“飛び入り”
「さすがに心配で、私も生徒も『大丈夫か?』と聞いたんですが、圭佑は『平気ですっ!』と。あの頃から根性は据わってましたわ」(田中)
そんな本田が月に一度だけ練習を切り上げる日があった。離婚して岡山の実家に身を寄せていた母親が、本田兄弟に会いに来る時だった。いつもとは別人のように肩をすぼめ、ボソボソと「休ませてください」と言ってくる。田中はすぐに察知した。
「小さい声で『先生、今日はもう帰ります。すんません……』と言うからね。圭佑は、ことさらに何も言わんかったけど、お母さんが大好きやったから。お母さんが会いに来た時だけはすぐにグラウンドを飛び出していった。あの後ろ姿は何とも言えんかった」
ほんのひとときだけ享受できる母親の愛情。小学生の本田にとって何物にも替え難い大事な時間だった。
(敬称略=つづく)