<第9回>隣に座った大ちゃんにメールで引退の相談
【連載】 鈴木明子 スケート人生「キス&クライ」
ソチ五輪閉会式の前日。
五輪という舞台を最後に引退するか、予定どおり1カ月後の世界選手権(14年3月)を最後に引退するかで悩んでいた私は、小さい頃からお互いを知っていて、いつも何かあると話を聞いてくれる大ちゃん(高橋大輔=28)に相談しようと思いました。
今のフィギュア界の仲間たちはライバル意識というよりは、普段から試合やショーで寝食を共にすることが多く、小さい頃から苦楽を共にしてきた「家族」のような存在です。その中でも、大ちゃんは年齢が近いこともあり、男女の垣根を越えて、誰にでも気配りができる人。私にとっても何度も相談しては助けられた恩人でした。
場所は選手村内にあった日本選手チームのサロン。世界選手権の手続きのために選手が集まる機会があり、大ちゃんも携帯電話を片手にソファに座っていました。私は隣に腰掛けたものの、周囲には選手だけでなく、スケート連盟関係者やスタッフも大勢いました。隣とはいえ、声を出して引退の話はできません。そこで、自分の携帯電話を使って大ちゃんにメールをすることにしました。