<第9回>隣に座った大ちゃんにメールで引退の相談
「世界選手権を辞退しようか、迷ってる」
数秒後、一文だけのメールが返ってきました。
「みんな待ってるよ!」
前向きな言葉に心は揺れましたが、問題は私の両足です。「うおのめ」の炎症が悪化していたため、選手権までの1カ月にわたる練習に耐えられる自信がありません。
もう一度メールを打ちました。
「この痛みに耐えて1カ月間は頑張れない」
また数秒後、今度は隣でほほ笑みながらこんな返事が携帯に戻ってきました。
「もう頑張らなくていいんだよ。せっかく日本でやる世界選手権。みんなはメダルより、最後のアッコちゃんの滑りを見たいんだから」
メールを読んで自分が恥ずかしくなりました。
彼もソチ五輪前のトレーニング中に負傷。一時は「五輪はムリ」と言われる中、ケガをおして本番に出場していました。そのケガが癒えないまま、世界選手権に出場する意欲を見せていました。結果的に彼は最後の最後で選手権を欠場したのですが、その時までは「絶対に出る」と話していた。全ては自分を待っているファンのため。いい演技を見せることも大事だけれど、まずは自分を待つ人たちに姿を見せる。彼の姿勢を見て、私は気づかされたのです。