<第3回>父親を襲った“燃え尽き症候群”の顛末

公開日: 更新日:

 野球が強かった黒沢尻工は当時、OBが全国の社会人チームで活躍していた。彼らは大会が近くなると黒沢尻工に足を運び、後輩たちの面倒を見てくれていた。

 大谷の父・徹(52)はその中のひとり、千葉の名門チームでプレーする先輩のツテで、そこに入社しようと思った。黒沢尻工の監督、両親、先輩も含め、千葉の製鉄会社に就職するつもりで話を進めていた。高校の次は社会人でプロを目指すつもりだった。

 ところが3年夏、高校生活最後の県大会で初戦敗退。3年間、ただひたすら野球に打ち込んできたつもりなのに、1年夏の県大会決勝で敗れた盛岡一にまたしても敗れた。

 中学時代に陸上競技の100メートル走で味わったあの感覚。コンマ数秒だろうと負けは負け。1番にならない限り、どうやっても他人の背中を見せられる。それが嫌で野球部に入ったはずなのに、敗北感というか、むなしい感覚がよみがえった。野球のことはしばらく、考えたくなかった。情熱を注いだ分、反動は大きかった。内定していた千葉の製鉄会社への就職も断った。燃え尽きた、はずだった。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷に懸念される「エポックメーキングの反動」…イチロー、カブレラもポストシーズンで苦しんだ

  2. 2

    やす子の激走で「24時間テレビ」は“大成功”のはずが…若い視聴者からソッポで日テレ大慌て

  3. 3

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  4. 4

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 5

    阿部巨人が《もっともビビる》阪神投手の復帰でCS戦々恐々…Gナインに根付く苦手意識

  1. 6

    阪神・大山悠輔を絶不調に変えた根本原因…良かれと取り組んだオフの肉体改造が裏目

  2. 7

    兵庫パワハラ知事やコバホークも? 東大→官僚→政治家は“ピカピカの経歴”にあらず旧いタイプ

  3. 8

    やす子「24時間テレビ」での好感度上昇は諸刃の剣…早くも“イジリにくい芸人”になる懸念

  4. 9

    キムタクが迫られる「主役の座」からの退場…盟友からも“二番手”降格を提言される異例の事態

  5. 10

    神田正輝「旅サラダ」“有終の美”前に拒絶態度は変わらず…沙也加さん元カレ舞台中止で復帰は絶望的