まさかの5連勝 稀勢の里“ケガの功名”で身につけた慎重相撲
序盤のヤマ場は乗り切った。横綱稀勢の里(32)が初日から5連勝。5日目は正代に攻めさせず、冷静な相撲で堅実に勝利した。
これにはある親方も「横綱は落ち着いていた」と、こう続ける。
「稀勢の里は立ち合いこそ左を差せなかったが、差し手争いで右上手を取った。そのまま寄り切ろうとするも、土俵際で正代が起死回生の投げに出た。正代は土俵際での粘り、逆転技に優れた力士。さらに、左から投げを打ちながら、右を差そうとしていた。稀勢の里はそうした正代の動きが見えていたのでしょう。だからこそ、投げをこらえると右を差される前に、即座に体を開いて上手投げを繰り出した。言ってみればカウンター気味に投げられた正代は、ひとたまりもなかったはずです」
支度部屋では「一日一日、集中してやっている」と、毎度おなじみのコメント。しかし、「相撲勘が戻ってきたか?」という報道陣の質問には、「そうっすね」とそっけないながらも、何かを確信した様子だった。
■土俵際では細心の注意
大関時代の稀勢の里は、左差し一辺倒。しかし、それだけでは限界があり、左のおっつけを覚えて横綱に昇進を果たした。ただし、それで相撲がうまくなったかといえば、そんなことはない。力任せの強引な攻めが多く、むしろ相撲下手として知られていた。