「このままのメンバーで…」主将高見が訴えたチームの総意
部屋をノックする音が聞こえた。ところが、やってきたのは西山ではなく、主将の高見泰範(捕手=東芝)だった。
高見は88年夏、同年行われたソウル五輪メンバーから外れた選手を中心に結成した日本代表の「Bチーム」の一員として、9月のカナダ・グランドホークス国際大会に出場した時から、彼を中心としたチームづくりをしようと考えていた。
■「このままのメンバーでお願いします」
私の目指す野球を理解し、全日本のために尽力してくれている高見のことだ。私の考えを察知していたのか、「監督は西山を代えるんですか?」と切り出し、こう訴えた。
「監督はこの4年間、『寄せ集めではなく、真の全日本チームとして一つにならないとダメだ』とおっしゃっていました。私は主将に命じられて以降、一つのチームに、ということを意識し、メンバーが入れ替わるたびに、選手たちに監督が目指す方向性を伝えてきました。そしてやっと、本当のチームが出来上がりました。新しい選手を入れるよりは、チームのためにもこのままのメンバーでお願いします」